ご挨拶

牧村憲一(レーベル・プロデューサー)

『緩やかなレーベル』。

当初あくまでも仮称であり、動き出したいという気持ちを伝えるためのものでした。驚いたことに、すぐに多くの方から問い合わせをいただきました。もっと知りたい、応援したいとの友人知人、そしてはじめての方からもありました。

 

そこで、いつまでも仮称ではと思い、いいレーベル名はないものだろうかと探していると、周りの皆さんがそのまま、それが一番いいレーベル名だと言うのです。決めました。

 

これからの音楽は音楽家はと、いい話が毎年毎年毎年出て来ますがビッグ・ビジネスでの範疇ばかり。実態はマーケッティングによる大量販売の、新システムの提言ばかりです。肝心の音楽制作のことはいつも置き去りです。 大きな投資は、それに見合う大きな利益を狙うのは当たり前で、それ自体を否定するものではありませんが、僕はというと身の丈サイズでしか出来ないのです。そこに誇りをもっています。

 

『緩やかなレーベル』の第1作目は、2018年4月リリースを予定しております。2017年12月から2018年2月いっぱい作品を集める作業をします。募集詳細発表は今月上旬に予定しております。第1作目は『緩やかなレーベル/都市型ポップス編』としてリリースいたします。コンピですが、ただのコンピではありません。また並行して第2作目の制作も開始します。

 

『緩やかなレーベル』。

音楽に限ったことではありませんが、個で発信できる時代だからこそ、もう一つの個との融合が必要だと思います。一人より二人。音楽制作に関しても、殊に可能性のある音楽家にとっては、プロデュースがますます必要だと思います。まずはそうした場にすることを、真剣に目指しています。でも、緩やかに、急ぎ過ぎないように。

 

〈プロフィール〉

1946年、東京都渋谷区生まれ。音楽プロデューサー。シュガー・ベイブ、山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、加藤和彦などの制作・宣伝を手掛け、84年に細野晴臣主宰のノン・スタンダード・レーベルに参加。80年代後半からはポリスターでフリッパーズ・ギターをプロデュース。フリッパーズ・ギター解散後は「トラットリア」レーベルを設立。2007年より昭和音楽大学非常勤講師を勤め、2014年には音学校を開講。著書は『未来型サバイバル音楽論』(共著:津田大介/中央公論新社)、『ニッポン・ポップス・クロニクル 1969-1989』(スペースシャワーブックス)、『「ヒットソング」の作りかた 大滝詠一と日本ポップスの開拓者たち』(NHK出版新書)など。

藤井丈司

牧村憲一さんはこの新しいシャツに袖を通しながら、あなたを見つめている。 新しい未来の音楽を夢見るあなたを見つめている。 どんどんデモ音源を送ってください。 さあ一歩前へ。素敵なショウの始まりだよ。

 

〈プロフィール〉

1957年、岐阜県生まれ。音楽プロデューサー/プログラマー/アレンジャー。80年代よりシンセサイザー・プログラマーとしてYMO、サザンオールスターズなどの作品に参加。サザンオールスターズ『KAMAKURA』、桑田佳『KEISUKE KUWATA』、布袋寅泰『GUITARHYTHM』シリーズなど大ヒットアルバムを共同プロデュース。その後も井上陽水、ゴスペラーズ、TEI TOWA、仲井戸麗市、SPIRAL LIFE、広末涼子など幅広いジャンルの作品を手掛けている。2017年に牧村、柴らとともに刊行した『渋谷音楽図鑑』が初の著作となる。

柴那典

一人で当たり前に音楽を発信できるようになったからこそ、これからの時代を担う作り手は、価値観やセンスが通じ合う同士がつながることがより重要になる。そういう、集い、結ぶものとしての「コレクティブ」に近い発想が、この「緩やかなレーベル」にあるように感じます。

〈プロフィール〉

1976年神奈川県生まれ。音楽ジャーナリスト。ロッキング・オン社を経て独立。雑誌、ウェブ、モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける。主な執筆媒体は「AERA」「ナタリー」「CINRA.NET」「MUSICA」「リアルサウンド」「ミュージック・マガジン」「婦人公論」など。「cakes」と「フジテレビオンデマンド」にてダイノジ・大谷ノブ彦との対談「心のベストテン」連載中。新刊『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)。